みらい21かなる - 社会福祉士 山眞弓

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祖母の針仕事

昔の女は野良仕事台所仕事、そしていつも針仕事をしている人達だった。

 

針刺し、糸、角ヘラ、まち針、縫い針、絎け台、指抜き、ぼろきれ、糸くずがごちゃごちゃと入った小さな行李を出してきて、ひまがあれば繕いものをし、洗い針して縫い直し、冬になれば足袋の裏を補強の為に刺し、孫のお手玉をつくったりしていた。

 

針を自分の耳の上辺りの髪の毛に持って行って、すっ、すっとこすりつけるしぐさを思い出す。針が滑るように、自分の髪の油で湿らすのだ。

 

祖母はめったに頭を洗わない。時々新聞紙を広げて、その上で長い髪を鋤櫛ですく。ごみですけない時は、油を付けて滑らせる。赤いツバキの花と目の大きな少女の挿絵が貼ってあるツバキ油のような気がする。初めは荒い鋤串、次に裏返して細い鋤串ですく。

 

抜け毛と垢とふけと、時には虱も混じってほろほろと落ちる。それを爪で潰す。それから元どうりに髪を結って、最後に一切を新聞紙でくるくると巻いて捨てる。戦前の農家の女はみんなそうだったのだろうと思う。

 

朝シャンの時代には驚きだろうが、そんなわけで、祖母の髪の毛はいつも湿っている。その髪の毛を時々縫い針でなぞるようにしながら、縫い進める祖母は結構幸せそうだった。針仕事は坐ってできるし、楽しい仕事だったのではないだろうか。ある意味創作活動というのか、端布をつないだり、工夫してきれいに仕上げる事ができる。

 

そんな祖母の針仕事の傍で、私はふきんに赤い糸で運針をして刺子の様に造ったり、人形の着物を拵えたり、針仕事のイロハを教わり、お手玉をつくってもらった。こたつ周りであれこれと楽しいひと時だったと思いだす。

 

洗濯もたまにしかしないが、するとなると毛糸の物もぬるま湯で丁寧に洗うと言う事を知らなかったので、フェルト化してしまう。固形石鹸をつけて洗濯板でよく擦り、家の前の用水路ですすぎだすのだった。

 

40年も前に亡くなった人だが、子供の頃一緒に暮らした祖母なので、その姿が恋しくてならない。私が中学生の頃が彼女の晩年だが、祖母は温泉町で商売をしていた彼女の末の弟宅に出かけ、温泉に入り、映画を見て、ごちそうを頂いてくるのが、精いっぱいの贅沢だった。

 

苦労を沢山越えて逝った人である。私も祖母のように幸せの空気をたくさん残して逝きたいと思っている。

| ふるさとの暮らし | 13:18 | comments(0) | - |









 
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かなる(canal)は「運河」と言う意味です。以前の目黒川に面した6階の事務所から眺めると、目黒川がちょうど足下を流れているように見えて、まるで運河の上にいるようでした。それでベニスのグランカナールのイメージと重ねて、私達の事務所がいろいろな情報や物資を運び込むよう、21世紀の運河になるようにと名付けたものです。